枠から人への広告配信を実現する「オーディエンスターゲティング」

近年のWebマーケティングは、大量の広告枠に対して出稿を行うのではなく、アクセスユーザーに合わせて最適な広告を表示させる形式へと変化してきています。これを支えるのが「オーディエンスデータ」であり、それを用いた手法を「オーディエンスターゲティング」と呼びます。

■オーディエンスデータとは?

インターネット業界において「オーディエンス」とは広告の受け手であり、「オーディエンスデータ」とは広告の受け手である“人”に関するさまざまな情報を示します。このオーディエンスデータについて、代表的なものが「クッキー(Cookie)」です。

クッキー自体は以前から利用されているものですが、オーディエンスデータでは自分のサイトへアクセスしてきたデータに加え、インターネット上のさまざまな行動履歴を組み合わせることで巨大な情報量となります。また、会員サイトのデータを組み合わせれば、年齢や性別、居住地なども同じデータとすることが可能です。尚、こうした多様なデータを一元管理できる仕組みを「DMP(Data Management Platform)」と呼びます。もちろんこうしたオーディエンスデータに、個人を特定する情報は含みません。

■最も生かされる広告分野

オーディエンスデータが最も活用されているのは、Web広告の分野です。オーディエンスデータを使ったターゲティング広告は「オーディエンスターゲティング」と呼ばれますが、実際にその具体例を挙げてみましょう。

あるユーザーが新築マンションのサイトやニュースを頻繁に閲覧していた場合。ファッションや旅行を扱う他の情報サイトを閲覧しても、マンションや不動産に関する広告が表示される機会が多くなります。この時、閲覧したファッションや旅行情報のサイトは、オーディエンスターゲティングを利用した広告配信を行っていると考えられます。つまり訪問してきたユーザーの行動履歴から、「マンション購入を検討している」と判断されたわけです。その判断のもとになるのがオーディエンスデータであり、位置情報があればその居住エリア、年齢や家族構成などの情報があればよりライフスタイルに合ったマンションの広告が配信されていきます。さらに、同時期にベビー用品に関するサイトもよく見ているようであれば、「新しい家族が増える」という情報も加えられるでしょう。すると、出産を踏まえた家族構成に合致する条件の不動産について広告が表示されていくのです。

■オーディエンスターゲティングのメリット

オーディエンスターゲティングとよく比べられるのが、以前からある「行動ターゲティング」です。この手法もユーザーの行動履歴をもとに、それに応じた広告を配信していくというもの。そのため、マンションのページを見ていれば、他のサイトでもその広告を配信していきます。しかし「行動ターゲティング」では、年齢や家族構成といったデータは紐づけられていません。つまり、どういった間取りのマンションを検討しているか、その詳細までは判別できないのです。

また、「リターゲティング」という手法も存在します。これは、あるサイトにアクセスしたユーザーに対して、訪問履歴からそのサイトの広告を他サイトでも配信していくというものです。行動ターゲティングもリターゲティングも、一定の効果を得ることはできるでしょう。しかし、オーディエンスターゲティングほどユーザーのインサイトに深く迫る広告表示は不可能です。

アドテクの進化は「枠から人へ」とよく言われます。このようにオーディエンスデータを用いることで、よりユーザーにとって価値ある広告が表示されていくのです。

■進化し続けるアドテク

オーディエンスデータを利用したマーケティングは非常に有効ですが、その反面で弱点もあります。ひとつは、同じユーザーがパソコンとスマートフォンを使用している場合に、それを同じユーザーとして認識しないという点です。オーディエンスデータを支えるクッキーはブラウザ上で取得されているため、デバイスが違うと紐づきません。

しかし現在、複数のデバイスをまたいだユーザーの行動を紐づける技術が開発され始めています。これを「フィンガープリント(finger print)」と呼び、日本語では「拇印」「指紋」を意味するオンライン上の証明データです。フィンガープリントを利用し、パソコンとスマートフォン、あるいはタブレットなど異なるデバイス間でも、同じユーザーの情報として処理していきます。この仕組を利用していると考えられるのが、Facebookの「カスタムオーディエンス」です。

こうした技術の急激かつ高度な進歩に対して、利用する事業者側にもそれにふさわしい体制づくりを求められています。オーディエンスデータを利用する際には、企画、運営、管理、分析をきちんと行っていくことが大切でしょう。しかし、マーケティング部門だけでそれを担うのは難しくなっています。

そこで必要とされるのが、システムや顧客管理といった他部署との連携です。しかしそれぞれ別の目的意識を持って日々動いているため、横断的にプロジェクトを監督できる責任と権限のある存在が欠かせません。適任と言えるのは「CMO(Chief Marketing Officer)」などの役職となるでしょう。